
│ 自己紹介をお願いします。
生年月日は平成2年2月22日、佐々木亨です。
福島県の伊達市で生まれ育って、スケボーは中学校ぐらい? 中3から初めて、それから震災の翌年に京都に引っ越して、京都で5年ぐらい住んでその時にショウヘイと出会って、京都の家を引き払ってmixology tourに行って1ヶ月半ぐらいタイ・ラオス行って、帰ってきたら家無いから(笑)とりあえず、関西空港の近くにあるショウヘイの実家に…どのくらい居たかな? 1ヶ月ぐらい、働かずにショウヘイのママの飯を食って酒を飲むっていう生活を続けてて(笑)。
│ で、そこからどうするか悩む時期だよね。
そう、そっから結構迷ってる時で、帰って来るキッカケになったのは、もともとずっとこっちにお世話になってたスケーターのムー君て人がいて。そのムー君が亡くなったって連絡があって、ショウヘイの実家にいた時に。それで、「告別式が3日後ぐらいなんだ。」ていう連絡が来て、じゃあ帰るかって。それからずっとこっちにいるんだけど、その間はクリーニング屋(うさちゃんクリーニング)とかでバイトしたり、ピンクのハイエース乗って(笑)。そっから、なんやかんや2年ぐらい働いて、ウダツの上がらない生活をしてる時にman whoのカズヤメンがこっちに帰って来て、「噂」っていう店舗を作ると。
│ それが何年?
それが今から3年近く前かな? 2020年とかか? それか2019年のどっちか。で、その時に遊びでシルクスクリーンをやってて、まぁ京都で出会ったんだけどシルクスクリーンは。で、そん時にman whoのプリントとかもお願いしたくて、で僕の活動とかのmixologyのプリントをやってるのも把握してくれてて、「噂やるし、その中で工場持ってman whoのプリントやって仕事にしてみない?」って、言ってもらって。そっから、気付いたらちゃんとした仕事にどんどんなって行ったみたいな。で、今に至るっていうザックリいうとそんな感じ。
│ 京都でシルクスクリーンに出会ったと言っていたけど、キッカケは?
それは、京都にスケーターのケイタ君って居て、遊びでシルクをやってて趣味で、自分の服とかシュウ君とかとやってたブランドがあって、ケイタ君が全部プリントを家でやってて、あとはLampのTシャツも一時プリントしてて、「こんなのあるんだ」てなった。(笑)
│ じゃあ、シルクスクリーンという仕組みを理解したのがその時?
そう、ザックリね。「こういう風に印刷されんだ」ていう、おおまかなベースを知ったのは。そっから、すぐ自分で簡易キットみたいなTシャツ君を速攻買って、自分のNNN(not need a name)をプリントし始めて、「おわぁ、出来た!」みたいな遊びをずっとやってて、ていうのが出会いかな?ケイタ君って人が僕には大きかった。
│ なんでシルクスクリーンだったのか、楽しく感じた理由は?
シルクが楽しいってなった理由はただ単純に自分が思いついたものをその場ですぐ作れる、物に変換できる楽しみを知ってこれだったら「こうやってブランドとか作れるな」みたいな、物って作れるなみたいな。で、仕事としてなっていったのは本当に意識的なものではなくて、なんか自然な流れで波に乗っかっていったみたいな(笑)。
│ イメージを物に変換できる、と言っていたけれど、イメージ(デザイン)はやっていたの?
それはやってた。趣味で自分の物作る時に古いノートパソコン(Mac)買って、イジリだして自分でデザインしてたから「これをTシャツにしたい」と思って。
│ 元々デザインをやっていて、そこにシルクスクリーンが加わったから自分の物が形になっていったんだね。
そうそう、物の作り方を理解した、みたいな。
│ でも、ただデザインを刷ればいい。て話じゃないでしょ? 技術とか知識とか。
本当にめちゃくちゃムズくて(笑)。で、独学だから、正解がないんだよね。本当は教科書みたいなルールがあるんだけど、工場とか行って下積みすれば全部教えてくれるんだけど、そこまでではなくてスケボーの精神と一緒で自分たちでやってみてそこから学んでいこう、みたいな。

│ じゃあ、工房を借りてから独学で知識とか経験を貯め始めたんだね。
そう、だから全然ペーペー。シルクの仕事をしてまだ3年目ぐらいだから、本当に新人ぐらいな感じ。
│ シルクスクリーンは何が難しい?
何だろう? ただ、穴が開いてるだけの版にインクを乗せて落とすだけなんだけど、平行じゃなかったりだとか、インクを多めに乗せたら滲んじゃうとか、刷り方の力加減とか、全てが揃わないと完璧な印刷が出来ない。だから、完璧な印刷はまだ出来てないみたいな(笑)。現状、最前はもちろん尽くしているけど、まぁ少しずつ上手くはなっていってると思う。自分では自覚してないけど、わかんない。
│ そこにある作品は色を重ねた写真風の技法だけど、写真とシルクスクリーンの違いは?
んー単純にいうと、シルクスクリーンは穴がないとプリントできないんだけど、コピー機とかで印刷したやつは多分顕微鏡で見たらドットになってると思うんだよね。でもシルクは版を作る時に抜ける大きさ(ドット)が決まってて、例えば0.2~0.3ミリくらいだったら出来るけど0.1無いぐらいなら抜けないとか。写真だったら全部出るけど、シルクスクリーンは限界があるから風合いが違ったりしてくるところがある。
│ 制限があるから表現が変わってくる?
そう、これは4色CMYKで、色を入れる順番もあって、独学だけど基本的に言われてるのは明るい色から入れた方がいい。逆にデザインによっては暗い色から入れて明るい色で締めたりとか。なんか組み合わせは無限大にあるっぽくて。これは明るいイエローから入れて、次マゼンタ入れて、その時点でほぼ絵柄になってて、シアンを入れるとほぼフルカラーになって、ブラックはシャープさを出すだけ。エッジを綺麗にするだけ。
│ セオリー通りに出してもいいし、順番を変えて自分のイメージに合った色の出し方でもいい訳だ。
ドットのやつはハーフトーンていう印刷なんだけど、紙用の特殊インクを使ってて、ノーマルインクを使うと紙が弛んじゃうんだよね。
│ インクによって刷ったものに影響が出ちゃうんだね。
そう、対象物が変わると、例えば木とかに刷るんだったらインクも違うし、ステンレスとか鉄とかに刷るんだったら今あるやつとは違うし、ガラスとかビニールとか…、全てにある。
│ じゃあ、それは試行錯誤?
そう、勉強してそれに合うインクを見つけて、メーカーと繋がったから大体仕入れられるようになった。なんかシルクスクリーンは「水と空気以外は印刷できる」て言われてて、個体であればイケる(笑)。
「水と空気以外は印刷できる」
│ かっこいいワードだね(笑)。
昔からの言葉があるっぽくて。
│ 今までやってきた中で難しかった事や、初めて印刷した物はある?
紙印刷も最近始めたし、フルカラーは昔からやってたんだけど、衣類に印字する時と紙に印刷する時て紙の方が明確に出るから、ドットの大きさをわざと小さくしたりとか、衣類の方は繊維があるから細かくする必要はあんまり無いと個人的には思う。その違いとかもあるし、あと看板は最近やった。
│ よくあるゴミの集積所の注意書きだよね?
ああいうのも最近やって、今はカッティングシートが多かったけど、昔の看板はみんな手書きで書いてたり、職人さんがいて。そこから、多分シルクスクリーンも導入されてきて、だんだん安く機械でやって今ではカッティングシートになって。
│ 工房を構えてから関わった企画やブランドはどんなもの?
基本的に多いのはman whoのプリント物、衣類とか。各地のスケートショップ、鳥取のキャメルクラッチとか、島根のDeeが作ったVASEとか、横浜のmodestのヒラ君とか、結構友達が多いかな基本。そこからちょっとずつ増えてきてるかな。
│ スケート関係の仕事がほとんどだね。
スケボーで繋がった人たちから仕事もらえるようになって、ちょっとずつだけど認知もされてきて、いろんな仕事ができるようにはなってきたかな。
│ 今後、仕事も増えていくだろうし自分の技術が上がったら挑戦したい事や、目標はある? どういう風になっていきたい?
そうだねぇ、とりあえずの近い未来で考えてるのは、ほんとに有りとあらゆる物に印刷してみたい。一回、どこまで行けるんだろう?みたいな(笑)。
今、シルクスクリーンてほぼ衣類にしか印刷してないから、もっと広いから本当は。衣類なら限界も出てくるだろうし。ここは共同の場で借りてるけど、ゆくゆくは自分の城も欲しくて、四、五十歳になるか分からないけど、次のステップはそこ行きたいなぁ、と。大きいとこを借りないとキャパオーバーになるから、ゆくゆくは。
とりあえず擦りまくるしかねぇなぁ(笑)。
MINDFIELD : 001 TORU SASAKI
筆者/水田准
写真/前川翔平
取材/2022.07.09